秋が深まる11月。木々が緑色から黄金色に染まり、肌寒さが増した街の風景に彩りを与え、儚くも美しい秋の季節がピークを迎えます。
この黄金色は11月の誕生石である「シトリン」の色味に似ています。今回はこのシトリンについて、魅力をお伝えしていきたいと思います。
11月の誕生石はシトリンとトパーズのふたつです。シトリンは、黄金を連想させる美しい輝きと色合いが特徴のカラーストーン。そんなシトリンの歴史から辿っていきましょう。
シトリンの名前の由来は諸説あり、橘系の果物という意味の「citrus」やフランス語の「citrin」(レモン色)に由来するものと思われます。 実際、両方の言葉から連想されるように、シトリンは黄色やオレンジの色調が一般的です。
シトリンはクォーツの一種ですが、その歴史はとても古く、数世紀にわたってジュエリー使用されてきました。 古代ギリシャから非常に人気が高く、広範囲で装飾品として使用さています。
また、17世紀のスコットランドでは短剣の柄の装飾にも使用されていました。 その後、シトリンはビクトリア朝時代でも非常に愛されており、当時のペンダントやブローチなどにもシトリンが多くあしらわれています。
また、中世ヨーロッパでは”トパーズ”(フォールスネーム)と呼ばれ上流階級の人々に非常に愛されたと伝えられています。
”シトリン・トパーズ”と呼ばれるのは、その名残りだと考えられています。
このように、古代から現在に至るまで、シトリンはその美しい黄金色と透明感で、多くの人々に愛され続けている宝石です。
古代、シトリンは邪気を払う幸福のお守りとして使われました。また、歴史的に病気を治すためにも様々な用途で使わ れていました。
シトリンは精神的な能力を刺激し、創造性や直観力を高め、自信を強めるとも言われています。
シトリンは、太陽の力を吸収し、大きなエネルギーを宿すともされていました。 そのことから、シトリンは気分を高め、太陽の光と暖かさを与えることができると信じられてきました。
また、この美しい黄金色のシトリンは、古来から現在に至るまで世界各地で冨と繁栄をもたらす宝石として広く信じられてきました。それ故、シトリンは「幸運の石」や「商人の石」とも呼ばれています。
また、パワーストーンとしても人気があり、シトリンは活力をもたらしストレスをも癒す力があるとされています。古い歴史の中では、消化を助けたり、解毒効果もあると信じられ、病気の治療としても活用されていました。
シトリンは、透明で淡い黄色から帯褐橙色のクォーツ変種です。最高級のシトリンの色は、褐色みが少なく、彩度の高い黄色から赤みがかったオレンジ色とされています。シトリンのこの色は微量の鉄によるものです。市場にあるシトリンのほとんどはアメシストに熱処理が施されたもので、天然のシトリンは稀少です。
シトリンは、その魅力的な色に加え、他のクォーツにも共通するように耐久性と手頃な価格もあり、最もよく売れる黄色〜オレンジ色の宝石として知られています。価格も手頃で、サイズが大きくなってもカラット当たりの価格が劇的に上がることはほとんどないので、多くのジュエラーに親しまれています。
英名 Citrine Quartz
和名 黄水晶(きすいしょう)
分類 酸化鉱物
化学式 Sio2
モース硬度 7
劈開性 なし
条痕 白色
結晶系 六方晶系
比重 2.65
石言葉 自信 繁栄
天然のシトリンの主要な産出地は、ブラジル、マダガスカル、モザンビーク、タンザニア、ウルグアイ、ザンビアなどです。
シトリンの色を生み出すために熱処理が施されるアメシストは、ブラジルで採鉱されたものが多くあります。
ボリビアの世界最大の淡水湿地の奥深くに、アナイ鉱山があります。この鉱山は天然且つ熱処理をされていない希少なシトリンの産地です。この鉱山は、1600年代にスペインのある征服者により発見されましたが、1960年代に再発見されるまで、3世紀もの間忘れ去られていました。
アナイ鉱山では、アメシストとシトリンが同じ結晶中に組み合わさったアメトリンも産出されますが、通常オレンジイエローから茶色または緑がかったイエローのシトリンが多く産出されます。
『商売の繁盛』と『富』をもたらす『幸運の石』として古くから大切にされてきたシトリン。
商売運や財運をアップさせてくれるため、新しく事業を始めようとする人や会社をもっと大きくしたいと願う人に心強いサポートをしてくれるでしょう。
目標の途中で困難や壁が生じても、克服する為の勇気や知恵を与えてくれるといわれています。
また、『太陽のエネルギー』をもつシトリンは、はつらつとした積極性をはぐくみ、太陽のように明るいエネルギーをもたらし、希望や勇気を与えてくれるでしょう。
ネガティブな感情に陥りやすい人や、自己表現が苦手な人が身につけることで、明るく太陽のような性格になるようにサポートしてくれます。周囲の人とのコミュニケーションを豊かで円滑なものにしてくれるでしょう。
心から明るく元気になることで、身体の健康も促進し、充実した毎日を送れるようになるといわれています。
シトリンは、ヒーリング力にも優れているため、蓄積したストレスをやわらげ心身のバランスを整えて、生きる希望を授けてくれます。
仕事や勉強などでイライラしたり、プレッシャーに押しつぶされそうなとき、このシトリンをデスクに飾ったり、アクセ サリーとして身につけるのもおすすめです。
波立った感情をおだやかに鎮め、落ち着きと冷静さを取り戻し、確かな判断力で、様々な問題もクリアできるでしょう。
不可能や無理という言葉に影響されたり、信念が揺らぎやすい人にもお勧めです。夢や目標を叶えるために、自分自身の意見をしっかりと持って、前進するための努力を続けれるように、自信を与え、サポートしてくれるでしょう。
シトリンは黄色から帯緑黄色、帯褐黄色などがあります。
また、『樹脂加工』が施され、ヒビや傷を見えにくくしている場合もがあります。
シトリンの透明感がありうっすらとした黄金色は優しさと気品を感じさせてくれますが、その発色がより濃くて鮮やかなものをブランデーシトリンと呼びます。これはその名の通りお酒の「ブランデー」から由来しています。
ちなみにフランスのコニャック地方で、厳格に定められた製法で製造されたブランデーをコニャックと呼びますが、ブランデーシトリンも「コニャックシトリン」という別名もあります。ブランデーシトリンは通常のシトリンより絶妙に色が鮮やかで濃いもので、ハチミツのような琥珀色、もしくはまろやかな飴色とも例えられます。
銀杏の木で例えると、緑から黄金色になったのがインペリアルトパーズや通常のトパーズであり、落葉し再度自然に還る瞬間の葉の色がこのブランデーシトリンに似ています。
シトリンを紹介するにあたり、ぜひ覚えていただきたいのが「アメトリン」です。これは一つの宝石の中にアメジストとシトリンが存在するとても面白い宝石です。
アメジストの夕暮れに一瞬訪れる幻想的な紫色の空を思わせるパープルカラーと、シトリンの透明感のあるイエローが作り出す神秘的なツートンカラーを持つのがアメトリンです。
このアメトリンは1970年代に流通しはじめ、その2色がなす美しいカラーにより瞬く間に人気の宝石となりましたが、実はそれは人工処理されて作られた宝石だったと判明しました。しかしその後1989年に中南米の国ボリビアにあるアナイ鉱山で天然のアメトリンが発見されました。
空を湖面に映し出す「天空の鏡」として有名なウユニ塩湖がボリビアにはあります。東京ドーム約22,700個分の広大な湖全体の高低差がわずか50cm以内という「世界で最も平な場所」は自然が偶然創った神秘的な場所だとされています。
このウユニ塩湖があるボリビアで発見されたアメトリン、実はどのようにしてそんな不思議な結晶構造ができたのかは未だ解明されていません。いまだ謎に包まれたシトリンとアメジストの美しい共存は、ウユニ塩湖と同様に自然が創りだした神秘と言えるでしょう。
シトリンは温かい石鹸水で洗浄することができます。
超音波洗浄器でのお手入れは通常は問題ありませんが、シトリンを熱にさらしてはいけませんので、蒸気洗浄など熱を加える洗浄はお勧めできません。
今回は秋も深まる11月の誕生石であるシトリンについて色々お伝えしてきした。
シトリンはまるで太陽のような華やかにきらめき、身に着けるだけで明るく前向きな気持ちにさせてくれます。新しいことにチャレンジする時やモチベーションを上げたい時には、シトリンを使ったたジュエリーを身に着けてみてはいかがでしょうか。